「研修は終わったのに、提案しても通らない」
「テスト案件には入れたが、そこから3年動いていない」
SES企業で未経験を採用したとき、必ずと言っていいほど起きる問題です。
この記事では、なぜ未経験者が案件に入れないのかを営業・客先・本人の3方向から分解し、
単価が上がらない構造と、そこから抜け出すために育成側が用意すべきものを整理します。
結論:スキル不足ではなく「証明できるものがない」
案件に入れない一番の理由は、実力そのものではありません。
客先が「この人は使える」と判断する材料が、スキルシートに何もないことです。
研修を3カ月受けた、という記述はどの会社のシートにも書いてあります。
差がつかない情報は、判断材料になりません。
| スキルシートの書き方 | 客先の反応 |
|---|---|
| 「3カ月の研修でJava・SQLを学習」 | 判断できない。他社と同じ |
| 「Laravelで在庫管理を個人開発。GitHubでPR20本、レビュー指摘は平均3件」 | レビューに耐える人だと分かる |
客先が知りたいのは「何を学んだか」ではなく、「指示を出したら形になって返ってくるか」です。
理由1:客先が未経験を取るリスクを負えない
客先の現場責任者の立場で考えると、未経験を1人受け入れることは自分の工数が減ることを意味します。
- 環境構築に付き合う
- 質問に答える
- 成果物をレビューする
- 合わなければ切る手続きをする
単価を下げても、この負担は変わりません。
だから「安いから入れる」ではなく「手がかからないから入れる」で判断されます。
ここを勘違いして単価だけ下げると、単価が低いまま案件も決まらない、という最悪の状態になります。
理由2:営業が本人の状態を説明できない
これは社内側の問題です。
面談で「この人はどのくらい書けますか」と聞かれたとき、
営業が答えられるのは、たいてい「真面目です」「やる気があります」までです。
| 質問 | 答えられない会社 | 答えられる会社 |
|---|---|---|
| 今どのくらい書けますか | 基礎は一通り | CRUDは自力で。認証は写経レベル |
| 詰まったときどうしますか | 質問してきます | エラー文を読んで切り分けてから聞いてきます |
| チーム開発の経験は | 研修でやりました | PRを20本、レビュー指摘の修正まで経験済み |
右側を言えるかどうかで、通過率がまったく変わります。
これは本人の能力ではなく、育成の記録があるかどうかの差です。
社内で育成していると、この記録がどうしても残りません。
教える先輩は自分の案件が本業なので、記録まで手が回らないからです。
理由3:本人が「聞き方」を知らない
客先が未経験者を切る理由で多いのが、技術力ではなく質問の仕方です。
| 切られる聞き方 | 残る聞き方 |
|---|---|
| 動きません、どうすればいいですか | ◯◯のエラーが出ています。△△まで確認して、□□が原因だと思うのですが合っていますか |
| 3日黙って詰まっている | 30分詰まったら状況を整理して聞く |
| 言われたところだけ直す | 同じ原因の箇所を探して合わせて直す |
これは教えれば必ず身につくものです。
ところが独学やeラーニングでは絶対に身につきません。人に質問する場面がないからです。
テスト工程に入れる判断は、正しいのか
「まずテスト案件で現場に慣れさせる」は、SESの定番です。
短期的には正しい判断です。単価は低くても、待機よりはるかにマシです。
問題は、そこから出る計画がないと、抜け出せなくなることです。
| 経過 | スキルシートに書けること | 単価 |
|---|---|---|
| 1年目 | テスト設計・実施 | 35〜45万円 |
| 2年目 | テスト設計・実施 | 40〜50万円 |
| 3年目 | テスト設計・実施 | 45〜55万円 |
年数は増えますが、書ける内容が増えません。
結果、「経験3年なのに開発は未経験」という一番売りにくい状態ができあがります。
本人もここで気づきます。そして転職を考え始めます。
3年かけて育てた人が、他社の開発案件へ移っていく。SES企業がよく失う形です。
抜け出すために用意する3つのもの
1. 客先に見せられる成果物
研修の課題ではなく、GitHubで動くものを1つ。
規模は小さくて構いません。重要なのは次の点です。
- READMEに、何を作ったか・なぜその設計にしたかが書いてある
- コミットが機能単位で分かれている
- プルリクエストとレビューのやり取りが残っている
3つ目が特に効きます。レビューを受けて直した履歴は、チームで働けることの証明になります。
2. 営業が使える状態の記録
月に1回でいいので、次の粒度でまとめておきます。
- 今月できるようになったこと(具体的な機能名で)
- まだ自力では難しいこと
- 質問の質はどう変わったか
これがあると、営業は提案のタイミングを前倒しできます。
待機1カ月の短縮は、そのまま数十万円の差になります。
3. 入場後も続くサポート
案件に入れて終わりにすると、最初の2カ月で評価が決まってしまいます。
入場直後こそ、客先に聞きにくいことを聞ける相手が必要です。
「こんな初歩的なことを客先の人に聞けない」で止まっている時間が、評価を落とします。
単価を上げる順番
| 段階 | やること | 単価の目安 |
|---|---|---|
| 入場前 | 成果物とレビュー履歴を作る | 提案が通るようになる |
| 入場〜6カ月 | 言われた範囲を確実にやり切る | 40〜50万円 |
| 6カ月〜1年 | 簡単な改修・実装を任せてもらう | 50〜60万円 |
| 1〜2年 | 設計の一部、後輩のレビュー | 60〜70万円 |
ポイントは「入場〜6カ月」で改修を任せてもらえる位置に行くこと。
ここで開発側に一歩入れるかどうかで、その後の単価カーブが変わります。
よくある質問
Q. 資格を取らせるのは有効ですか?
A. 書類の通過には多少効きます。ただし面談では「で、何が作れますか」を必ず聞かれます。資格だけで案件が決まることはほぼありません。
Q. 単価を下げて実績を作る戦略はどうですか?
A. 期間を区切るなら有効です。ただし「いつ、何を条件に上げるか」を先に決めておかないと、低単価のまま固定されます。契約更新のタイミングで交渉材料を出せる準備が必要です。
Q. 自社開発の経験を積ませたいが、案件がありません
A. 社内システムを作らせるのが現実的です。勤怠、日報、資産管理など小さいもので構いません。実務のレビューが入れば、それは立派な開発経験になります。
Q. 何カ月で提案できるようになりますか?
A. 未経験からだと3〜6カ月が目安です。詳しい費用感は育成コストの記事にまとめています。
まとめ
- 案件に入れない理由はスキル不足ではなく、判断材料がないこと
- 客先は「安いか」ではなく「手がかからないか」で見ている
- 営業が具体的に説明できないと、それだけで通過率が落ちる
- テスト工程は悪くないが、抜ける計画がないと3年滞留する
- 成果物・記録・入場後のサポート。この3つで提案の質が変わる
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