エンジニアの研修費に、国の助成金を使えないか。
よく聞かれる質問です。
結論から言えば使える可能性はあります。ただし、使い方を間違えると手間だけかかって支給されないことになります。
※制度の内容・要件・助成率は年度ごとに変わります。実際に申請する際は、必ず厚生労働省の最新の支給要領と、管轄の労働局で確認してください。この記事は全体の流れをつかむためのものです。
人材開発支援助成金とは
従業員に職務に関連する訓練を受けさせた事業主に対して、訓練にかかった経費の一部と、訓練中の賃金の一部が支給される制度です。
いくつかのコースに分かれており、対象者や訓練の内容によって使えるコースが変わります。
未経験エンジニアの育成では、職務に直結する専門的な訓練として扱えるかどうかが入口になります。
一番間違えやすい点:申請は「訓練の前」
もっとも多い失敗がこれです。
訓練を始めてから「助成金を申請しよう」と思っても、間に合いません。
訓練の計画を、開始前に届け出ておく必要があります。届け出の期限も決まっています。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 訓練の計画を作る(内容・期間・対象者・費用) |
| 2 | 訓練開始前に計画を労働局へ提出する |
| 3 | 計画どおりに訓練を実施する |
| 4 | 訓練の記録・出勤簿・賃金台帳などを残す |
| 5 | 訓練終了後、期限内に支給申請する |
| 6 | 審査を経て支給される |
「もう研修を始めてしまった」という相談をよく受けますが、この場合はその回はあきらめて、次の人から使うほうが確実です。
お金が入るのはずっと先
助成金は後払いです。
研修費は先に自社で全額払い、訓練が終わって申請し、審査を経てから振り込まれます。
6カ月の育成なら、実際に入金されるのは1年近く先になることもあります。
資金繰りの計画に入れるときは、この時間差を必ず見込んでください。
必要になる書類
細かい様式は年度で変わりますが、求められる中身は毎年ほぼ同じです。
- 訓練の計画書(何を、何時間、誰に)
- カリキュラムの内容が分かる資料
- 訓練を実施した記録(日時・受講状況)
- 費用の請求書・領収書
- 出勤簿、賃金台帳
- 就業規則など、社内制度が分かるもの
ポイントは「実施した記録」です。
日々の学習を記録に残していない会社が多く、ここで詰まります。月次で育成レポートを作っていれば、そのまま資料になります。作り方は育成の進み具合を数字で見る方法にまとめました。
助成金ありきで計画を立ててはいけない
これが一番伝えたい点です。
助成金には要件があります。訓練時間の下限、対象になる訓練の種類、実施方法などです。
これに合わせようとすると、本当に必要な育成ではなく、要件を満たす育成になります。
| 起きること | 結果 |
|---|---|
| 時間数を満たすために内容を水増しする | 本人が退屈して伸びない |
| 対象になる形式に合わせる | その会社の案件に合わない内容になる |
| 書類作成に工数を取られる | 指導する時間が減る |
順番はいつも同じです。
まず必要な育成を決める。そのうえで、要件に当てはまるなら申請する。
当てはまらないなら、使わないほうが結果的に安く済みます。
申請を検討するときの進め方
- まず管轄の労働局に電話して、想定している訓練が対象になりそうか聞く
- 対象になりそうなら、最新の支給要領を読む
- 書類作成に自信がなければ、社会保険労務士に相談する
- 研修を依頼する会社にも、必要な資料を出せるか確認しておく
最初の電話が一番早いです。使えるかどうかは、そこでだいたい分かります。
よくある質問
Q. 外部に育成を委託した費用も対象になりますか?
A. 訓練の内容・形式が要件を満たすかどうかで決まります。委託先が実施記録やカリキュラムを出せることが前提になるので、事前に確認してください。
Q. 必ずもらえますか?
A. 要件を満たし、書類が揃っていれば支給されますが、審査で不備があれば支給されません。「もらえる前提」で資金計画を組むのは避けてください。
Q. 助成金を使わない場合、育成コストは下げられませんか?
A. 下げる方法はあります。一番効くのは育成期間そのものを短くすることです。育成コストの記事で計算しています。
まとめ
- 申請は訓練を始める前。始めてからでは間に合わない
- 後払いのため、入金は1年近く先になることもある
- 日々の実施記録がないと、申請の段階で詰まる
- 助成金に合わせて中身を歪めると、育成そのものが失敗する
- まず管轄の労働局に電話するのが一番早い
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