「新人にChatGPTを使わせると、力がつかないのでは」
「でも、禁止したら今度は現場のスピードについていけない」

未経験を育てている会社で、いま一番判断が割れているところです。

結論から書くと、禁止も放任も、どちらも失敗します。
この記事では、それぞれ何が起きるかを整理したうえで、現場で運用できるルールの作り方をまとめます。


結論:使わせる。ただし「答えをもらう」使い方は禁止する

方針結果
完全に禁止隠れて使う。しかも使い方が下手なまま現場に出る
自由に使わせる動くコードは書けるが、なぜ動くか説明できない
使い方を決めて使わせる調べる速度が上がり、理解も残る

分かれ目は「AIを使うかどうか」ではありません。
「答えをもらっているか、考え方を確認しているか」です。


禁止すると何が起きるか

1. 見えないところで使う

スマホでも使えるので、禁止しても止まりません。
止まるのは「使い方を教える機会」だけです。結果、一番まずい状態になります。

2. 現場に出た瞬間に差がつく

客先ではすでに当たり前に使われています。
禁止して育てた新人が現場に出ると、周りが5分で終わることに半日かかります

3. 情報の扱い方を教えられない

禁止していると、客先のコードを貼ってはいけないといった実務上の線引きを教えるタイミングがありません。
これは事故に直結します。禁止のほうがリスクが高いのは、この点です。


放任すると何が起きるか

逆に、何もルールを決めずに使わせた場合です。

症状現場で起きること
コードは書けるが説明できないレビューで指摘されても直せない
エラーが読めないAIに貼って直らないと詰む
設計の判断ができないAIの提案が妥当か判断できず、そのまま入れる
調べる力が育たない公式ドキュメントを読んだことがない

特に深刻なのがエラーが読めないことです。

AIに貼れば直ることが多いので、その場は困りません。
ところが客先の環境固有の問題になった瞬間、AIも答えを出せません。そこで完全に止まります。


AI時代に育てるべき力は何か

AIが書けるようになったことで、新人に求めるものが変わりました。

これまでこれから
書く文法を覚えて手で書くAIで下書きし、直せること
読む自分のコードが読めれば十分他人(AI含む)のコードを読んで判断できる
調べる検索して探す出てきた答えが正しいか検証できる
説明するあまり求められなかったなぜその実装かを言語化できる

右側は全部、「読む」と「説明する」に集約されます。
コードを書く量が減った分、判断する力の比重が上がった、ということです。

これは、レビューを受けないと絶対に身につきません。
AIは「そのコードでいいのか」を止めてくれないからです。


そのまま使えるAI利用ルール

社内の育成規程にそのまま入れられる形でまとめました。

やってよいこと

  • エラーメッセージの意味を聞く
  • 自分が書いたコードのレビューを頼む
  • 用語や概念の説明をしてもらう
  • 2つの実装のどちらがよいか、判断材料を出してもらう
  • テストデータやサンプルを作る

やってはいけないこと

  • 課題の答えをそのまま生成して提出する
  • 自分で説明できないコードをコミットする
  • 客先のコード・設定値・個人情報を貼り付ける
  • エラーを読まずに、いきなり全文を貼る

運用の軸は1つだけで足ります。

説明できないコードは、自分のコードではない。

この1行を守らせるだけで、AIの使い方はほぼ整います。


ルールが守られているかを確認する方法

ルールを作っても、確認できなければ意味がありません。
確認は簡単で、コードについて2つ質問するだけです。

  1. この処理は、なぜこの書き方にしたのですか
  2. この行を消すと、何が起きますか

AIに丸投げしている場合、2番でほぼ答えられません。
逆に答えられるなら、AIを使っていても理解は残っています。使わせて問題ありません。

もう一段踏み込むなら、思考ログの提出が有効です。
「なぜその実装を選んだか」を数行書かせるだけで、丸写しは成立しなくなります。


情報の取り扱いは、最初の1週間で教える

技術より先に教えるべき部分です。SES企業では特に重要になります。

貼ってよいもの貼ってはいけないもの
一般的なエラーメッセージ接続情報、APIキー、パスワード
自分で書いた学習用のコード客先のソースコード
公開されているライブラリの使い方顧客名・システム名が入った仕様
ダミーデータ実データ、個人情報

客先のAI利用ルールは、案件ごとに違います。
「自社では使っていいが、この現場では禁止」というケースがあることを、先に伝えておいてください。


AIを使えることは、営業材料になる

客先も、AIをどう扱うかで迷っています。
そこに「弊社では利用ルールを定めて教育しています」と言える会社は、まだ多くありません。

スキルシートや提案時に書けることの例です。

  • 生成AIの利用ガイドラインに基づく教育を実施済み
  • 情報の取り扱い(機密情報の入力禁止)について研修済み
  • AI生成コードのレビュー・検証を前提とした開発経験あり

同じ未経験でも、これが書けるかどうかで印象が変わります。
案件に入れない理由の記事で書いたとおり、客先が求めているのは手のかからなさだからです。


よくある質問

Q. 最初の1〜2カ月だけ禁止するのはどうですか?
A. 悪くない折衷案です。ただ「禁止」ではなく「エラーの意味を聞くのはOK、コードを書かせるのはNG」と用途で区切るほうが実用的です。全面禁止は結局守られません。

Q. AIを使うと学習が早くなりますか?
A. 調べる時間は明確に短くなります。ただし理解の深さは、レビューを受けているかどうかで決まります。AIだけでは、間違ったまま進んでいることに気づけません。

Q. AIが書けるなら、未経験を育てる意味はありますか?
A. あります。AIの出力を判断して責任を持てる人が必要だからです。むしろ「書く人」より「判断できる人」の希少性が上がっています

Q. 社内でルールを作るのが難しいのですが
A. この記事の「やってよいこと/いけないこと」をそのまま使ってもらって構いません。AhaGate for BusinessではAI研修をプランに含めており、ルールづくりから対応しています。


まとめ

  • 禁止しても隠れて使う。教える機会だけが失われる
  • 放任すると、動くコードは書けるが説明できない人になる
  • 基準は1つ。「説明できないコードは、自分のコードではない」
  • 理解が残っているかは、コードについて2つ質問すれば分かる
  • 情報の取り扱いは技術より先に、最初の1週間で教える
  • AI教育をしていること自体が、客先への提案材料になる

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