「面談では元気だったのに、突然辞めると言われた」

未経験採用をしているSES企業なら、一度は経験があるはずです。
そして退職理由はたいてい「一身上の都合」で、本当の理由は分からないまま終わります。

この記事では、未経験エンジニアが辞める原因を構造的に整理し、
辞める1〜2カ月前に必ず出るサインと、現実的に打てる手をまとめます。


結論:辞める理由は「きつい」ではなく「先が見えない」

未経験入社の人は、最初から「大変なのは覚悟の上」で入ってきます。
だから、忙しさや難しさだけでは辞めません。

辞めるのは、次の3つが重なったときです。

要因本人の中で起きていること
① 成長が実感できないやっているのに、できるようになった気がしない
② 相談できる相手がいないこんなことを聞いていいのか分からない
③ 将来の道筋が見えないこのまま3年経っても同じなのでは

3つが揃うと、ほぼ止められません。
逆に言えば、1つでも崩しておけば残ります。


原因1:待機期間に自信を失う

入社後、案件が決まらない期間が一番危険です。

本人からは、こう見えています。

  • 面談に落ち続ける=自分は必要とされていない
  • 会社に売上を出せていない=いる意味がない
  • 同期はもう現場に出ている=自分だけ遅れている

会社側は「焦らなくていい」と言いますが、本人には逆効果のことがあります。
「気にするな」は、状況が変わらないことの言い換えに聞こえるからです。

打てる手

  • 待機中の課題を「会社の仕事」として渡す(社内ツール開発など)
  • 面談に落ちた理由を、必ず本人にフィードバックする
  • 「次はここができれば通る」という具体を1つ示す

落ちた理由が分からないまま落ち続けることが、一番自信を削ります。


原因2:客先で孤立する

SES特有の構造です。自社の人が誰もいない場所で働くのは、未経験者にはかなり重い状況です。

本人が抱えるもの言えない理由
初歩的なことが分からない客先に聞くと評価が下がると思っている
仕事量が多い/少なすぎる文句だと思われたくない
人間関係が合わない自社に言うと迷惑をかける

ここで「相談する先がない」状態が数カ月続くと、静かに限界がきます。
月1回の営業の定期連絡では、まず本音は出てきません。「大丈夫です」で終わります。

打てる手

  • 技術の質問ができる相手を、客先の外に用意する
  • 営業以外の窓口を作る(評価に関係ない相手のほうが本音が出る)
  • 面談は「困っていることは?」ではなく「今週やったこと」から聞く

3つ目は効果が大きいです。作業の話をさせると、詰まりが自然に出てきます。


原因3:成長が止まったと感じる

テストや監視の案件に長く入っていると、確実に来ます。

本人はSNSや勉強会で、同世代が開発の話をしているのを見ています。
そこで「自分はエンジニアと名乗れない」と感じ始めると、転職サイトに登録します。

この構造はSESで未経験者が案件に入れない理由と表裏一体です。
入れる案件が限られる → 経験が偏る → 成長実感が消える、という順番で進みます。

打てる手

  • 案件と別に、学習と成果物づくりを続けさせる
  • 「次の案件はここを狙う」という道筋を、半年単位で示す
  • できるようになったことを、本人に見える形で記録する

3つ目が一番安く効きます。人は成長していても、記録がないと実感できません。


辞める前に出るサイン

退職の意思は、だいたい1〜2カ月前には固まっています。
その間に、行動に必ず変化が出ます。

サイン見えるところ危険度
質問が減ったチャット
返信が事務的になったチャット
学習が止まったGitHubの草、提出物
「大丈夫です」しか言わなくなった面談
将来の話をしなくなった面談
有給の取り方が変わった勤怠

最も分かりやすいのは「質問が減る」です。

できるようになったから減ったのか、諦めたから減ったのか。
ここを見分けられるのは、日常的にやり取りしている人だけです。月1の面談では捉えられません。


やってはいけない引き止め方

やりがちな対応なぜ逆効果か
給与を上げると提示するお金が理由ではないので響かない。むしろ「そう思われていたのか」となる
「もう少し頑張れば」と言ういつまでか分からない。先が見えない不安を増やす
育ててやった、と伝える罪悪感で残っても、数カ月後に必ず辞める
次の案件を約束する実現しなかったときに信頼が完全に切れる

言い出されてからの引き止めは、ほぼ成功しません。
勝負はサインが出ている段階です。


離職1人の損失を計算する

感覚ではなく金額にすると、対策の優先度が変わります。

項目金額
採用費40万円
育成期間の人件費(6カ月)180万円
教える側の工数52.5万円
再採用のコスト40万円
合計312.5万円

これに、その人が稼ぐはずだった粗利が加わります。
月15万円で3年なら540万円。合わせて850万円規模の損失です。

詳しい計算は育成コストの記事にまとめています。


現実的にできる防止策

  1. 週1で技術の会話をする場を作る(雑談ではなく、手を動かしている話)
  2. 営業以外の相談窓口を用意する(評価者に本音は言えない)
  3. できるようになったことを毎月記録して本人に見せる
  4. 半年後の目標を、案件名か技術名で具体的に置く
  5. 質問量の変化を誰かが見ている状態にする

すべて社内でできますが、誰かの時間が毎週確実に取られます
そこが続かずに形骸化するのが、一番よくあるパターンです。


よくある質問

Q. メンタル面のケアは、素人がやって大丈夫ですか?
A. 話を聞くところまでは問題ありません。ただし睡眠・食欲・涙もろさなど体調に出ているときは、専門家につなぐべきです。判断を現場の上長に任せると、対応が遅れます。

Q. 1on1をやっていますが、本音が出ません
A. 相手が評価者だと出ません。「今週書いたコード」など具体的な作業から入ると話しやすくなります。それでも出ない場合は、利害関係のない第三者を挟むのが早いです。

Q. 辞める人は結局辞めるのでは?
A. 一定数はそうです。ただし早期離職の多くは、防げるタイミングを1〜2回通り過ぎています。サインの段階で1回でも拾えれば、残る確率は上がります。

Q. 離職の予兆を外部に見てもらうことはできますか?
A. できます。AhaGate for Businessのメンタルサポートプランでは、メンタルケア心理士が月120分の面談を行い、予兆を企業側に共有します。


まとめ

  • 辞める理由は「きつい」ではなく「先が見えない」
  • 待機・孤立・成長の停滞。この3つが重なると止められない
  • 質問が減ったら要注意。1〜2カ月前に必ずサインが出る
  • 言い出されてからの引き止めは、ほぼ成功しない
  • 1人辞めると、粗利まで含めて800万円規模の損失になる

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